江戸時代、夫婦・親子の愛情を表現した2曲「鶴の巣籠」「鹿の遠音」

音楽にはテーマに合う「感じ」で作曲する

と言った手法がよく取られます

例えば夏なら「夏の感じがする」って曲とか、ラブソングなら「ラブソング感がある」とか

 

でもこういった感性はその時代に話題になったり、流行したりした音楽の影響で「そんな感じがする」と言ったイメージ像を持たれる様になっている訳です

例えばピアノの音色を聞いて夏のイメージを持つのは、久石譲のSummerの作風に影響された為でしょう

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他にも夏をイメージした作曲ではピアノがよく使用されます

それだって時代の流行といった物の影響があります

 

当然です 江戸時代以前の日本には西洋楽器なんて一般的ではないでしょうし、聞いた事もなければ夏のイメージなんて持ってないでしょう

人間がピアノの音色で夏をイメージする本能なんて持ってる訳ないですし

 

この通り感性と言うのは時代という「時間」の影響が強いのです

時代毎に感性は変わるのです

 

さて本題

 

江戸時代の頃、西洋楽器もない中で「愛情」を表現した曲を、二曲紹介します

 

まずは「鶴の巣籠」という曲です

 

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これは元々「胡弓」という江戸初期の楽器で演奏するそうですが、尺八が一般的になってしまった事で、殆ど胡弓の演奏が断絶してます

というか胡弓自体、現代で演奏する人が少なくなった

そんな珍しくなった中で、この動画では胡弓の演奏が聴けます

 

「鶴の子育てから巣立ちまでの親子の愛情」 

というテーマで作られた曲とされています

現代の感覚で聴いても「親子の愛情?」と首を傾げそうではありますが、当時の感性が垣間見られる歴史資料です

 

現代で親子の愛情を表現した曲というと、私がパッと思いつくのは「トイレの神様」辺りでしょうか

流行りには疎いのでテレビでちょっと聞いた程度ですが、「まぁそんな感じの曲なんだな」って感覚

 

鶴の巣籠とはだいぶ違う雰囲気です

時間経過と文化の断絶によってこんなに感性は変わる訳です

 

こちらは「鹿の遠音」という曲

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「夫婦の愛情」を表現した曲と言われます

鹿の遠音とは簡単に言うと「鹿の発情期である秋に鳴く求愛行動である遠吠え」です

実は日本文化に於いても鹿は大変密接な関係を持っておりまして、色々な面で鹿の文化が散見されます

シカトと言う言葉も語源は花札の鹿です

その花札の紅葉と鹿も10月の秋、鹿の雌雄関係が強い事から「男女仲の願い」という意味があるほどです

紅葉と鹿は「恋愛」という意味があるとも言えましょうか

 

以前書いた記事で「貝合わせは江戸期では夫婦和合の象徴であり、玉虫は鎌倉期には良縁祈願の象徴で江戸期には媚薬」と書きましたが、鹿と紅葉も恋愛成就的な位置を占めていたかもしれませんね

clothroad.hatenablog.jp

 

因みに鹿肉を紅葉と呼ぶのも花札由来です

祝言の時に鹿肉を饗するなんて事は無かったんですかね? 高いから無理かな?

 

そしてこの曲は牡鹿と牝鹿がお互いに鳴き交わす様を表現する為に、「連管」という二重奏で演奏される事も

男女で歌う合いの手みたいな物と言えば解り易いでしょうか

 

今で言う所の「ラブソング」に該当する曲です

 

 

出典

kotobank.jp

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ja.wikipedia.org