採用する主に明治以前の建築要素 各種メモ
外観
蔵造(他素材派生)
蔵造は漆喰のみが正当且つ伝統と誤解されているが、石版を貼り付けた発展派生も確認されており、過度な素材の限定は文化的コンテクストを無視し、発展派生を制限する有害な思想である。
これは蔵造等に限らず、文明に排他される文化産業が高級路線の為に高級素材のみを押し売りした事が影響した。(例:絹・漆喰・漆・)
無論、日本だけでなく西洋文化圏に於いても類似の現象は確認される。
上記の発展派生事例を考慮するに、現代に於ける他素材を用いる発展派生も文化的コンテクストに反しないと思われる。
窓
掛子構造の戸(形状派生)
江戸期に於ける非宗教の漆喰民家建築は「延焼防止」という目的から重厚な蔵造りを発生させた。
窓も例外ではなく、漆喰で作られた重厚な掛子構造の蓋を木製扉を覆う形で設けた。
掛子構造は断熱性・防音性・気密性に優れる構造である為設けられる様になったが、次第に装飾性が強まると共に機能性の妥協・度外視が見られる様になった。
可動する事の無い彫刻としての蓋は現代でも「星乃珈琲店」「くら寿司」等の店舗建築に見られる伝統彫刻文化であり、文化的コンテクストに反しないと思われる。
また、軽量化・高断熱化等の目的で他素材発展派生として樹脂材を用いるのは、文化的コンテクストに反しないと思われる。
扉
掛子構造の戸
恐らく起源は平安時代の漆喰建築と思われる。
当時の絵画に火災に苛まれる民衆が、避難所の様な瓦のない白漆喰の建築に集っているが、その入口に設けられている戸が漆喰の戸の起源と考えられる。
掛子構造ではない様だが、ある程度の分厚さが確認される。
大正期の事例として木造の掛子構造の戸が確認されており、装飾性が強まった発展派生として延焼防止機能の度外視が見られる。
壁
鏝絵 海鼠壁(柄派生・鏝絵派生) 鉢巻 腰巻 うだつ 袖壁
外装の壁面には江戸期の蔵造りに確認される通り、海鼠壁・鏝絵等が用いられる他、雨樋としての鉢巻・腰巻等も施される。
中華建築文明の延焼防止としての防火壁「うだつ」が日本にも定着した。
庇の角度に合わせた角度になっている事例も多く、真横から見ると階段の様な形状になっているうだつもある。
二階建て以上重ねた複数のうだつは確認していないが、文化的コンテクストに反しないと思われる。
仮称として「はしごうだつ」と分類している。
柱
腰巻 鏝絵 海鼠壁(柄派生・鏝絵派生)
外装の柱も江戸期には延焼を防ぐ目的で、漆喰塗装等が施される例が当時の蔵造りから確認される。
雨樋として腰巻きも設けられ、漆喰を用いた事から漆喰彫刻の鏝絵や海鼠壁等は文化的コンテクストに反しないと思われる。
屋根
形式(兜造・高塀造・櫓造・蒼龍楼白虎楼・)
民家建築に用いられる屋根には発展派生が多く確認される。
中華建築様式とは違う建築様式は大変独自性が強い事から、日本のブランド性に差別化が期待できる。
縁側
吉原遊廓に見られる市松模様の床(詳細不明)
浮世絵・写真等に確認されるが、詳細は掴めず。
内装
主に民家建築(他素材派生)
非宗教建築である事。
窓
掛子構造の戸
内側の窓の戸に掛子構造の戸を施した事例は江戸期には確認できないが、増田の内蔵の明治期建築には確認できる。
西洋文化の系統樹とするには影響は強くないと思われる事から、文化的コンテクストに反しないと思われる。
戸
掛子構造の戸 絵襖(他素材派生) 障子(他素材派生)
掛子構造の戸が窓に設けられるのであれば、同様に入り口に設けられた戸が掛子構造であっても文化的コンテクストに反しないと思われる。
絵襖は後述の障子の発展派生を考慮するに、紙・木材以外の素材を使用しても文化的コンテクストに反しないと思われる。
豊臣秀吉の黄金茶室には着色した布が障子紙代わりに用いられており、他素材の発展派生は文化的コンテクストに反しないと思われる。
また金箔が施される事からも、箔置き等の装飾も文化的コンテクストに反しないと思われる。
壁
海鼠壁(柄派生・鏝絵派生) 鏝絵 塗装(樹脂材・他素材派生)
内装の壁の装飾としては、江戸期に鏝絵が確認される。
また江戸期の浮世絵などには、壁紙なのか植物の描画が施された壁面が確認される。
江戸期の越後屋に於いては海鼠壁が確認されるが、土足空間の壁に当たる事から内装の壁面としていいか判断が難しい。
明治期の蔵造りの内装には海鼠壁が確認できるが、文化的コンテクストに反しないか判断が難しい。
漆等の塗装は十分伝統的である為割愛。
柱
箔置き 塗装(樹脂材・他素材派生)
日本建築の内装に於いては、宗教建築でもない限り彫刻等の装飾は見当たらず、非宗教建築にはまったく装飾が施されない角材の柱が圧倒的多数を占める。
豊臣秀吉の黄金茶室に設けられた柱は金箔が施されている事から、箔置きは発展派生の一種と考えても文化的コンテクストに反しないと思われる。
塗装として漆が用いられる柱は伝統的なので割愛。
天井
梁 折り上げ 格天井 鏡天井 絵 ガラス(他素材派生) 水槽(液体派生・枯山水派生)
江戸期に於ける豪商「淀屋」の自宅には「夏座敷」と名付けられた部屋が設けられていたと言う記録があり、その天井はガラスの水槽に金魚を泳がせ日光を波紋を挟んで採光させた旨が記される。
この水槽に入れる装飾を他素材に派生させるのは、文化的コンテクストに反していないと思われる。
派生として考えられるのが
「鯉等の他生物」
「浮かぶ舟底」
「着色液体」
「軽量化を目的にした枯山水」
「軽量化を目的にしたガラスの表面加工による液状表現」
「模倣として絵画で表現した軽量化事例」
等、挙げれば切りが無い程発展派生に期待ができる。
また、江戸末期には鏝絵による彫刻が施された天井の事例も確認できている。
民家に於いては天井の無い物が多く、梁が幾重にも重なる。
床
油団(他素材派生) 畳(他素材派生・塗装派生) 板敷(塗装派生)
油団は樹脂材として油の他に、漆も使われていた。
着色塗装として朱漆や青漆等を用いる派生は、文化的コンテクストに反しないと思われる。
畳は豊臣秀吉の作った黄金茶室の着色された事例等が見られる程度には、原始的な発展派生例と思われる。
板敷は極めて原始的な床材であり、塗装加工もまた原始的な装飾加工として施される事から、文化的コンテクストに反しないと思われる。